虫歯の「いろは」
歯医者さんに歯科検診に行ったときに「C1、C2、C3」などと言って、虫歯を分類しているのを耳にしたことがありますか。なんとなく虫歯の症状の程度を表しているんだろうなということは分かっても、詳しくは何のことだかわかりませんよね。そこで、虫歯の進行状態と、治療の方法について少しご紹介したいと思います。
まず、「C0」と言われる段階ですが、これは、虫歯になりかけているものの、まだ歯に穴が空いていない状態です。ですから、この状態では適切な歯磨きをすれば、元の健康な状態に戻すことができます。通常、歯科医院では歯磨き指導をし、正しい歯磨きを身に着けられるようにお手伝いします。
次が「C1」と呼ばれる段階です。これは歯の表面の「エナメル質」が虫歯にかかっている状態ですが、まず、虫歯になっている部分を削り、その後に歯の色をした樹脂(レジン)や金属で穴を埋めます。この段階では麻酔をしなくても治療中に痛むことはありません。ただし、虫歯が浅くても、虫歯があちこちにあるのは、お口の環境が虫歯にかかりやすくなっていると考えられます。このような場合には、正しい歯磨きを身に着けるほか、フッ素やキシリトール入りの歯磨き粉やお口のリンス剤を使うことが勧められます。
次の段階「C2」ですが、これは虫歯が「エナメル質」の下の「象牙質」にまで達している状態です。状態によっては麻酔が必要になります。治療法としては、虫歯の箇所を完全に取り除いた後に、詰め物がしやすいように歯の形を整え、当日詰められる場合には、詰め物をした後に表面をきれいに磨いて終わりです。もしも型取りをして、後で詰める場合には、仮の詰め物をして、約一週間後に出来上がった詰め物を入れて固定して完了です。
「C3」というのは、「歯髄」と言われる場所まで細菌が侵入して、中の神経と血管の部分まで、感染を起こしている状態です。これ以上細菌が広がらないために、「歯髄」を取り除き、中をきれいに消毒した後に、薬で完全に塞いで根っこの中と外を遮断します。実は、この段階まできてから歯科医院に駆け込む方がかなり大勢いらっしゃいます。千種区の患者さんたちも例外ではありません。しかし、この段階では歯髄を取り除く、つまり、歯の神経を抜く必要が出てきますから、歯へのダメージがかなり大きくなってしまいます。
虫歯になりやすい方も、そうでない方も、健康できれいな歯を保つために、定期的に歯科検診を受けるよう、お勧めいたします。
ご注意!この習慣はお子さんの歯並びが悪くする!
千種区の子どもたちを見ていると、白い歯がきれいに揃ってかわいいなあ、と思います。しかし、時々、というか、以前に比べて、歯並びの矯正をしている子どもたちが増えていることに気づきます。確かに大人になって歯並びの悪いのは避けたいですから、小さいころにしっかり矯正するのは良いこと。ただ、一番良いのは矯正自体しないことですよね。なんといっても、矯正するには時間とお金がかかりますし、子どもたちもその間、なにかと大変です。
親御さんの中には子どもが矯正するようになったのは、子どもの発育と関係しており、自分たちではコントロールできない、つまり、自分の子が矯正をせざるを得なくなったのは「運が悪かった」と考えている方もおられるようですが、実はそんなことはありません。もちろん、中にはどうしようもできない要素も関係していますが、親の注意で防ぐことができることだってたくさんあるのです。歯医者さんの視点からすると、その習慣さえ改善しておけば、なんとか避ける事ができたのに、ということがあります。ちょっとご紹介しましょう。
まず、食卓テーブルで食事をするときに、子どもを大人用の椅子に座らせているようなら要注意です。子どもは足が届きませんで、食事の時にずっと足をぶらぶらさせることになります。実は足がしっかり地についておらず、ぶらぶらしていると、噛む力にも影響することが知られています。噛む力が弱くなったり、回数が少なくなったりするんですね。そして、そうなると子どもの顎の発育に影響します。顎の発育が不十分だと、永久歯が生えてきた時に、狭いスペースに無理に生えてくることになりますので、結果としてどうしても歯並びがガタガタになってしまう可能性がある、ということなのです。
じゃあ、床に座って食べさせていれば良いのか、というと、その場合も座り方に注意しなければなりません。ほとんどの子は正座をして食べたがらず、横座りをしたり、だらっとした格好をしてしまいます。そうすると、股関節や顎の関節の歪みに繋がるのです。「そんなちょっとしたことが?」と思われるかもしれませんが、子どもの体が発育過程であることを忘れないで下さい。すでに成長しきってしまった大人の場合と訳が違うのです。
ですから、歯科医院としては親御さんの皆さんにしっかりと座り方を指導してくださることを願うばかりです。ちょっとした習慣が子どもの一生を決めることをお忘れなく。歯科にお越しになることがあれば、わたしたちも喜んでお子さんにも指導をいたします。
歯並びは遺伝する?
「うちは夫婦そろって歯並びが悪いので、子どもに遺伝しないかと心配だ…。」千種区の親御さんから、こういったご相談を受けることがよくあります。中には、お子さんの乳歯も生えそろわないうちに、歯科矯正を考え始める方もいらっしゃるようです。さて、多くの方が、歯並びは遺伝的なものだと思っておられるようですが、実際のところどうなのでしょうか。
確かに歯並びと遺伝の関係は否めません。子どもの骨格や目鼻立ちと同様に、歯並びも、お父さんお母さん、さらにはおじいさんおばあさんに似る可能性は大いにあります。しかし、わたしたちの歯並びに関係してくる要素が一つだけではないことを忘れてはいけません。日本人によく見られる悪い歯並びに、ガタガタの歯並びや、出っ歯がありますが、それらの歯並びは主に、小さなあごに、大きな永久歯が収まりきらないことが原因で起こります。ですから、お父さんの大きな歯と、お母さんの小さなあごが遺伝した場合、歯並びが悪くなる可能性は高くなりますが、逆のことが起これば、子どもの歯並びはよくなる可能性があるのです。
また、習慣が歯並びに与える影響も考える必要があります。例えば、乳幼児期の悪い歯並びの原因としてよくあげられるのが、指しゃぶりです。4〜5歳になっても指しゃぶりの癖がついていると、指の力によって歯がだんだんと動いてしまうことがあるのです。また、食事の習慣が歯並びに与える影響も見逃せません。小さな頃から、よくかんで食べる習慣があれば、自然と歯もあごも本来の働きをしてくれますが、柔らかいものばかり食べていたり、よくかまずに食べる習慣を持っていたりすると、あごが十分に発達できないまま大人になってしまいます。すると、未発達のあごに、大きすぎる歯が生えそろい、結果的にガタガタの歯並びが生まれてしまうのです。
指しゃぶりの癖にしても、食習慣にしても、子どもの頃の良い習慣は、親御さんの努力にかかっているといっても過言ではありません。是非お子さんと、毎日の良い習慣を培っていきましょう。また、そうはいっても、遺伝の力に逆らえないのも事実です。お子さんの歯並びのことで気になることがあれば、まずは歯科医院を一度訪れて、歯医者さんから専門的なお話を聞いてみるようお勧めいたします。
受け口の早期治療
前回出っ歯について書きましたが、その反対は「受け口」です。専門的には「反対咬合(はんたいこうごう)」とか「下顎前突(かがくぜんとつ)」と言います。これは、下あごが上あごよりも前に出てしまっている状態のことです。こうなると、食べ物がうまくかめなかったり、発音がしづらくなったりします。顎を自由に動かすことができないため顎の関節に負担がかかることもあります。もともと遺伝のせいで下顎が上顎より出ている人もいれば、骨格は正常ですが、前歯の角度の違いにより反対咬合になってしまう場合もあります。
大人の場合は、歯を抜いて、十分なスペースを作ってから歯を動かす歯科矯正が一般的ですが、重度の場合は、下あごの骨を手術で切って、後ろに下げる「外科矯正」が必要なこともあります。しかし、子どもの治療の場合はまた違ってきます。
上あごの成長発育は、7歳〜9歳にピークを迎え、その後、思春期に下あごの成長発育がピークになります。このように上顎と下顎の成長のピークにズレが有るため、治療時期が大切になります。お子さんが受け口かな?と思われたら迷わず矯正専門医を受診することをおすすめします。歯の生える角度の問題なら比較的簡単な装置で改善する場合があります。
さて、3歳〜6歳くらいまでのお子さんの受け口の治療によく使われるものに、ムーシールドと呼ばれる装置があります。これは透明なプラスチックでできた治療装置ですが、毎晩寝ている間に口に入れておくもので、通常は、数か月から半年で改善が見られます。しかし、治った後にも、約1年間使い続けることで、後戻りを防ぐことができます。もちろん、この治療法で遺伝性の受け口も100%治ることは保障できませんが、かなりの確率で治ります。
すべて永久歯になってからですと、固定式の装置が一般的です。取り外し式の機能矯正装置と言われる装置も使用することがあります。矯正治療後に反対咬合になってしまう場合があります。ほとんどが遺伝性の反対咬合であることが多く、身体の成長が止まるまでは矯正治療が終わっても注意深く経過観察することが大切です。
千種区にも小児矯正を得意とする歯科医院が多くあります。お子さんの受け口のことでお悩みの方も多いと思いますが、まずは歯医者さんとよく相談し、お子さんに合ったベストな治療方法を選んでください。
気になる出っ歯の治療法
現代の子どもたちは、体格や歯の大きさが、以前より大きくなっているようです。しかしその一方で、あごの大きさには特に変化がないようです。そのため、大きすぎる歯が小さなあごに収まりきらず、歯並びが悪くなってしまうというケースが増えています。残念ながら、千種区の子どもたちも例外ではありません。
さて、気になる歯並びの中でも代表的なものが、一般に出っ歯と言われる歯並びです。専門的には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と言います。これは、上あごが下あごよりも前に出ている歯並びのことで、日本人に非常に多く見られる歯並びと言えます。一般的な治療法としては、歯がきれいに並ぶスペースを作り、歯を並べていくという方法があります。残念ながら、あごの成長が終わってしまっている大人の場合、歯を数本抜いてスペースを作るしかありません。
しかし、あごの成長途上にある子どもの場合はまた別です。子どもの場合は、まず歯を動かす前の段階で、あごを広げる拡大装置を口の中に付けます。そうすることで、自然と歯を動かすスペースが確保できるため、あとで健康な歯を抜くことなく、歯を動かすことができる可能性が出てきます。
歯を動かす装置の種類は、歯科医院によってさまざまですが、ワイヤー矯正と呼ばれるものが、スタンダードな矯正法です。これは、歯に「ブラケット」と呼ばれる装置を取り付けて、そこにワイヤーを通し、少しずつ歯を動かしていく方法です。歯に金属がずらっと並ぶため、見た目の悪さは少し気になりますが、歯にしっかりと固定されるため、矯正期間が短くなるというメリットがあります。
さて、自分の出っ歯は、遺伝や歯が大きすぎるせいだと思っておられる方も多いようですが、原因はそれだけではありません。出っ歯の方の多くが、普段自分でも気づかずに、鼻ではなく口で呼吸をしていたり、舌で前歯を押していたりすることがあるのです。ですから、そういった良くない癖を直すために、歯科矯正とともに、口や舌のトレーニングを取り入れる必要もあります。
治療をよりベストなものにするためにも、歯医者さんの説明をよく聞いて、しっかり取り組みましょう。