院長ブログ

日本は歯周病の緊急事態宣言は何十年も続いている

千種区覚王山のたなか歯科クリニックの田中です。

首都圏をはじめ、全国各地でコロナ禍が続き、感染者がなかなか収まらないようです。
私の医院でも希望者のワクチン接種が行われました。

新型コロナは感染症。

けれど歯周病も感染症なのです。


この画像は歯茎の内面から歯周病菌(P.G.菌)が体内に侵入しているところです。

(今回の画像はサンスター財団の教育啓発動画コンテンツからキャプチャーしたものです)

 

日本国民の成人8割が歯周病というのは、緊急事態宣言に近いのではないでしょうか?

この状態がもう何十年も続いているのです。

テレビコマーシャルでは新しい歯磨き粉、電動歯ブラシ、様々なデンタルグッズが紹介されています。

それでも歯周病は収まる気配さえありません。

 

歯周病の進行は、症状が出る(グッと悪くなる)→落ち着く→症状が出る(更に悪くなる)→落ち着く

を繰り返しながら進んでいきます。

すなわち「急性症状」→「停滞期」の繰り返し。

階段を一歩ずつ降りるように進行していくのが特徴です。

症状が治まったから治った訳ではないのです。
きちんと処置しないと必ず次の苦しみが来ます。

 

命に関わらないから良い?

いえいえ、歯周病の感染による炎症は全身に影響を及ぼしています。

 

歯周病がどれだけ全身に影響を及ぼすのか。

サンスター財団が全身疾患と歯周病の関連についてCGを使って解説しております。

海外の専門医による難しい内容ですが、リアルなCGを見るだけで何となくその怖さを知って頂けるとおもいます。

是非見て頂けたら幸いです。


これは歯周病菌(P.G.菌)が血管内に侵入したところです。
このあとどのような免疫応答があり、問題を起こすのかを知ることができます。

https://www.sunstar-foundation.org/education/about/

 

テレビでよく出てくる新型コロナの専門家さん、歯医者ならすぐ分かりますが口元を見ると歯周病です。
それも結構進行しているようです。

国民のコロナも心配でしょうが、時間を見つけて歯科医院で歯周病の治療を受けて頂いてほしいと思います。

 

ちなみに歯周病菌最悪のP.G.菌(Porphyromonas Gingivalis)には遺伝子の違いで6つの型があります。

18歳〜22歳以上の日本人には6種類のうちどれかが口腔内に生息しています。
その型により運が悪いと44倍以上の確率で歯周病が悪化します。

その検査は(歯周病菌の)PCR検査が有効です。

今は症状がなくても将来どうなってしまうのか、心配な方も多いでしょう。

 

詳しく調べる方法がありますし、その対処方法もちゃんとあります。
6月から「覚王山プライベートデンタル」を開設いたします。

健康保険外ではありますが、歯周病を集中的に3ヶ月で克服することも可能です。
ご興味のある方はスタッフまでお声かけください。

 

千種区覚王山
たなか歯科クリニック・覚王山プライベートデンタル

田中伸尚

歯の神経の再治療、CTによる再評価

久しぶりの投稿です。

千種区覚王山のたなか歯科クリニックの田中です。

各学会がオンラインになり、自宅にて聴講できますが何か物足りなさを感じている今日この頃。

先日新潟で発表の機会がありましたが、目の前に人がいると嬉しいですね!!

(もちろんその後の懇親会はマスクをしながら食事。早々に退散しました)

ところで最近ではCTを導入している歯科医院が多くなってきました。

(現在では一部条件付きで保険に導入されております)

今回の内容は神経の治療、専門用語で「歯内療法(しないりょうほう)」、特に再治療(Retreatment、または感染根管処置)のCTによる評価です。

(この治療は自由診療です。ご理解お願いいたします)

 
 
私は神経の治療の際はCT撮影はルーチンにしております。
 
CT撮影の理由ですが、まずはこのレントゲン写真を御覧ください。
これは通常撮影するデンタルフィルムと言われているものです。
奥から(右側から)2番めの冠がかぶっている(金属は白く写っている)★の歯が痛いということで撮影しました。
 
基本的にレントゲン写真は2次元です。
近くの構造も遠くの物も重なって写るので読影(レントゲン写真を読み解くこと)は解剖を理解していないと難しいです。
あえて角度をずらして撮影するテクニックもあります。
 
それと比べてCTを撮影し、コンピューター上でマウスをクルクルと回しながら
解析(マルチスライス)していくと病巣をしっかりと確認できます。
3次元的にどの方向でも切り取れるレントゲン写真ということです。
 
「CT」とよく言われていますが、これは ”Computerized Tomography” の略称で、
コンピュータありきのレントゲン撮影です。
家庭用PCでもゲーミングPCレベルのものならば解析可能で、歯科医院でもその恩恵を受けているという訳です。
(ソフトウェアは目が飛び出るほど高価ですが。。。)
 
 
ちなみにこれが術前のCT画像
右側の根の先に膿がたまりその圧力のためドーム状に膨れ上がっています。
また、頬側の骨が溶かされているのも観察できます。
同じ歯で違う角度からは(右側奥から2番目の歯の)根の先がやはりドーム状に
盛り上がっています。
ここには膿がたまっています。
 
たまった膿を切開して出すだけなら誰でもできます。
痛みも腫れも消え、患者さんは治ったと感じるでしょう。
しかしその傷口が塞がったら、また時間が経てば腫れてきます。
これは単なる対処療法で応急処置です。
根本的な治療がされない限り腫れを繰り返しその度に深刻な状態になります。

冠を外し、マイクロスコープを使用し根の中を徹底的にきれいにします。
汚染物質を除去するのが大変。
これは通常の治療以上の技術が問われます。
 
(これについてはいずれご説明する予定です)
 
唾液を遮断するためラバーダムを使い術野を確保します。
ラバーダムによる治療の成功率は論文ではいろいろ議論されていますが、
僕は少しでも成功の確率が上がるならばつけるべきだと判断しています。
 
僕が師事するフリードマン先生は「ラバーダムしない歯科医は警察に通報する!!」
とまで言っています。半分冗談ですが実は本気です。
 
 
これが根管充填後のデンタルレントゲン(フィルムに傷がついて見にくいです(汗)
マイクロスコープできれいになったことを確認し、根管をMTAで封鎖しました。
ここで使用したMTAは保険適応外の材料です。
この後にファイバーコアで補強し、冠を被せます。今回はジルコニアを使用しました。
イメージはこんな感じ。図は下顎の歯ですので上下逆ですが。
 
 
治療後は問題なく過ごして頂いています。
 
 
術後1年後にたまたまCTを撮影する機会があったのでこの歯を再評価しました。
(患者さんからの希望です)
通常3ヶ月後、たまに6ヶ月後に再評価し治癒傾向を確認してから冠をかぶせます。
 

 

術前と術後を並べてみると・・・
(左が術前、右が術後1年)

 

 
完治していることが確認できます。
 
このようにCTは治療の診断において非常に有効です。

もしご自身の歯で何かしら心配なことがありましたらCTを撮影すると今まで見えなかったものが見えることがあります。

 

たなか歯科クリニックには
「覚王山プライベートデンタル」
という医院を併設し、専門的な保存療法を行っています(完全予約制・自由診療)。

本気で一本の歯を残したい方はご相談ください。

 

千種区覚王山
たなか歯科クリニック・覚王山プライベートデンタル

田中伸尚

コロナ禍で進行するむし歯

皆様こんにちは。

千種区覚王山のたなか歯科クリニック、院長の田中です。

まだまだ残暑厳しいですが、マスク苦しいですね!!
夏のマスクについて賛否両論ありますが、とりあえずマスクは今やネクタイなどと同じく身だしなみの一部となった気がします。

さてコロナ禍において「不要不急」の行動はつつしむように、と報道されています。
日本中、そして千種区の皆様もそれに従い、むし歯があることを知りつつも歯科医院への通院を我慢される方はすくなくありません。

その結果たなか歯科クリニックだけでなく他の医院においても最近の傾向として、

「重症化した方の来院が多い」

ことが上げられます。

「痛くてたまらない」
「歯がグラグラしてきて食事ができない」

突然の痛みに耐えかねての来院が多いのです。

 

ほんの一例ですが、

上のレントゲン写真は新型コロナ前です。小さなむし歯が見つかりました。

この段階ならば小さくむし歯を取り除き歯へのダメージは最小限で済みます。

 

次の写真は上と同じ歯を最近撮影したレントゲン写真です。

むし歯は大きく進行し、神経の近くにまで迫っています。

コロナを恐れるあまり予約をキャンセルし、コロナ禍が収まったら受診しようと考えていたそうですが、
残念ながらそれより先に痛みがでてしまいました。

「神経を残す・残さない」を考えなくてはいけないほど進行したむし歯です。
当然治療期間だけでなく治療後の違和感や治療費も大きくなります。

治療説明時、とても後悔している表情を見ていたたまれない気持ちになりました。

治療は麻酔下でラバーダム(歯を隔離して感染を防ぐ)を行い、神経を保存しました。
現在経過観察中です。

 

この件があって以来、お節介だと思われるかもしれませんが、キャンセルでしばらく来院されていない患者様に電話やはがきで連絡することにしました。

「連絡なんていらない!!」とお叱りの言葉を頂くことも希にあります。
でも歯を失う悲しみを思えば中断されている方に連絡することが患者利益に繋がると思っています。

歯の治療(むし歯そして歯周病の治療)は放置しておいて治ることはありません。
歯の治療は「不急」に思われるかもしれませんが、「不要」ではないのです。
遅れれば遅れるほど治療が難しくなる傾向があります。

比較的新型コロナが落ち着いている今が歯医者に通う良い機会だと思います。

どの歯科医院でも感染対策がなされており、クラスターになった例はありません。
安心して通院してください。

これからどうなるか分かりませんが、冬になりインフルエンザが蔓延する前に、治療を終えておくことをおすすめします。

 

歯科医から見てイソジンのうがいは良いのか?

歯科医の視点からポビドンヨード製剤のうがいはどうか?

答えは「過度のうがいは避けて!」です。

 

コロナ対策の一つにイソジンなどのポビドンヨード製剤(以下ヨード製剤)のうがいが報道され薬局から次々とイソジンなどのうがい薬が消えています。

このヨード製剤は手術など局部の消毒に頻繁に使われる薬でその効果は証明されています。

 

しかし過度のうがいを避ける理由は3つあります。

1つ目は虫歯の様に歯が溶ける

2つ目は歯に色がついて取れなくなる

3つ目は口腔内の常在菌まで殺してしまう

 

1つ目についてですが、ヨード製剤はコカコーラほどの酸性を示し、口腔内に残留することで歯の表面の美しいエナメル質が溶けてしまいます。

酸により歯が溶けることを「酸蝕症(さんしょくしょう)」といい症状が進むと冷たいものがしみたり虫歯の様な痛みが出ます。更に症状が悪化すると神経を取り冠をかぶせる必要が出てきます。

この酸蝕症は1本だけでなく全体の歯に見られるため治療本数がとても多いのが特徴です。

 

2つ目は歯に色がつくこと。

ヨード製剤は黄色に着色する性質を持ちます。

先ほど述べたように、溶けた歯の表面はザラザラになります。そこへヨードの黄色い色素が入り込み取れにくい着色となります。

考えてもみてください。黄色く着色し、溶けて薄っぺらくなった歯を。おまけに冷たい物がしみるのです。こうなりたくないですよね?!

 

3つ目の常在菌を殺してしまうことですが、お口の中は善玉菌もいれば悪玉菌もいます。

それらの菌がバランスをとりながら生きているのですが、外部から侵入した雑菌の繁殖を防ぐ効果があります。

常在菌が死滅してしまい、後から悪い菌が侵入・増殖してしまうと治りにくい病気になってしまいます。

 

以上が、感染者以外はコロナ予防としてヨード製剤の長期うがいを避けて欲しい理由です。

新型コロナウイルスを怖がるあまりに、大切な歯を失い苦しんで欲しくないと思います。

田中伸尚

歯が割れてしまった時の治療

「割れた歯(歯牙ハセツ)の治療」

歯を失う原因のNo. 1は「歯周病」。
そして2番目は「虫歯」。
3番目は「破折」です。

やっかいなのは、歯周病とむし歯はある程度予防できるのですが、
「破折」はある時突然襲ってきます。

よく神経を取ると歯が割れやすくなる、と言われていますが神経のある歯でも割れることがあります。

割れ方は様々なパターンがあり、垂直に竹を割ったように真っ二つになった場合は残念ながら抜歯が適応になります。

今回は治療前にCT撮影し歯を保存したケースです。

もちろん全ての破折歯を保存できる訳ではありません。
客観的な診断のもとで施術したことをご理解ください。

 

(このケースでは材料は保険適応外のものを使用しています)

 

来院時の歯の状態です(マイクロスコープ での写真です)。

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他院にて上の奥歯に応急処置がされており、次回抜歯と言われたそうです。

セメントの一部を外すと破折がハッキリと確認できます。

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2つになった歯はそれぞれグラグラし、かむと強い痛みがあります。
少し動かすだけで出血します。

歯髄診=歯の神経の診断(冷・温熱、電気)では反応がありませんでした。
神経は死んでしまっているようです。
診断結果は欧米の診断基準でclass3(難症例)、抜歯判断でもおかしくないケースです。

もし残せたとしても健康な歯と同じように回復することはできません。
十分な説明の後、歯を出来る限り残したいという希望があったためCTを撮影しました。

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破折線は歯を縦断していましたが、致命傷は免れたようです。

しかし3つの根のうち一つにヒットしているため、この根は摘出します。
やはりただでは済まされないようです。

また感染は根の先まで進み、上顎洞(耳鼻科領域)まで広がっています。
歯が原因の上顎洞の炎症を「歯性上顎洞炎」といいます。

歯内療法が必要です。

歯内療法→割れている根の摘出→仮歯で経過観察→最終的な被せ物
という治療計画を立てました。

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歯に矯正用のバンドを巻き固定しました。言わばギブスですね。

また亀裂にレジンやセメントを流し込み、歯の内部を密閉できる状態にしました。

歯内療法は感染源を断ちバクテリアを減少させるのが目的です。
せっかく中身をきれいにしても感染経路を遮断しなくては上手くいきません。

緑色のシートはラバーダム
もうおなじみですね。
歯の保存療法ではマストなアイテムです。
歯を隔離して感染予防するだけでなく、器具落下による誤飲を防ぎます。

噛んだ拍子に亀裂が入らないように、噛み合わせを減らし患者さんにはこの歯で噛まないように協力していただきました。
患者さんの協力はとても重要です。治療は歯医者と患者さんの二人三脚です。

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(レントゲン写真)
根充(根の中を密封する)後、ラバーダムを外し一つの根を摘出しました。

写真では分かりずらいですが、3本足から2本足になっています。

(高流動性の材料が根管孔外にフローしていますが症状はありません。将来的に吸収されます)

この後、残した根はそれぞれ分離され冠をいれる準備をします。

お手入れ方法を説明し3ヶ月間仮歯で過ごして頂き、経過を見ました。

十分に噛めて、お手入れもできることが確認できたため、歯型をとりセラミックの冠をセットしました。

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セラミックの歯の形が通常とは異なっているのは根っこが一つないからです。

残された2つの根の間に歯間ブラシを入れてもらいます(上の写真)。

この部分はとても食べ物がはさまりやすくなり、虫歯のリスクが高い場所です。

治療は終わりましたが、毎日のお手入れと定期的なプロフェッショナルケアが必要になります。

また、さらなる破折のリスクもあるためかみ合わせのチェックも大切です。

毎日のお手入れなど手間がかかりそう、と思う方もいらっしゃるでしょう。

そうなんです。歯を残すということはリスクも残るということです。

今回の破折ケースでは致命傷を免れ歯を保存しましたが、治療後も虫歯や破折のリスクから解放された訳ではありません。

歯を残すことはそれなりの覚悟が必要だと思います。

いっそのこと抜歯して、入れ歯やブリッジ、インプラントの方が楽かもしれません。

(もちろんそれぞれの治療のリスクは新たに発生しますが)

どの治療方法が適切か、患者さんの価値観やかかる時間と費用を考慮しなくてはいけません。

治療方法は最終的に患者さん自身で決めることですが、納得しないまま治療が進んでも良い結果は得られないでしょう。

もし自分の歯が割れてしまった時、治療の判断の一助となったら幸いです。

このケースにおける担当
歯科医:田中、西尾、木方
歯科衛生士:奥田

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