歯科今昔9

歯科今昔9

こんにちは。


お久し振りです。歯科医師の三浦です。

アマルガムをご存知の方は、多くいらっしゃることと思います。昔は虫歯を取った後、空いた穴へはアマルガムを詰めていました。さだまさしを聞いていた世代では当たり前のお話かもしれませんが、今は昔の話です。

大昔、アマルガムがなかった時代、すなわち18世紀よりも以前、虫歯を取った穴へは金を詰めていました。それも地獄の痛みと共に。麻酔が発達していない時代でしたから、虫歯を削ること自体が相当な苦痛を伴いました。そこへ金を詰めます。柔らかな金をトンカチで歯の穴へ入れて行くのです。そのためには相当な痛みを覚えたことでしょう。

さて麻酔がどうにか治療に使えるようになった時代、つまり18世紀過ぎ、金を詰めるか、あるいは歯を抜くしかなかった時代に、アマルガムが颯爽と登場します。これは安価で、手軽で、しかも口の中という過酷な環境に耐える画期的な金属でした。

ところが初期のアマルガムは酷いもので、90度以上の温度がないと固まってしまいます。虫歯を取った穴へそんなものを注入すれば虫歯は取れても歯の神経が死んでしまったり、激痛のあまり転げ回ったりことは当たり前でした。

それでいて精度も良くなかったのです。温度や配合次第では硬化時に収縮してポロリと取れたり、反対に膨張して歯を割ったり、とてもではないが金に太刀打ち出来る代物ではなかったのです。

水銀は単体では毒性を帯びています。秦の始皇帝は水銀を不死の薬として常用し、命を縮めました。古代ローマではワインに水銀を添加し、味をまろやかにして飲んでいましたが、これも毒を飲んでいるに等しい行為でした。日本でも有機水銀が原因で水俣病が起こっています。このように、水銀単体あるいは有機水銀は毒です。

一方、スズや銅と結びついた水銀はアマルガムとして使われ、無害です。発明から100年以上も歯科用材料として用いられていたのですから。こうして多くの人の歯を破壊した上でアマルガムは洗練され続け、海外はもとより日本でも当たり前の修復材料として使われていったのです。

しかしながらそれも今は昔。歯を黒くしたり、端が欠けたり、材料としての役割は果たされようとしています。アマルガム修復による患者の健康被害は2009年時点で報告されていません。現在、何で虫歯を修復しているか。樹脂です。プラスチックの一種です。コンポジットレジンとも呼ばれるもので、光で固まるものや化学反応で固まるものなどがあります。

虫歯があるか気になる方がいらっしゃったら是非一度お越しください。今はもう虫歯を治すためアマルガムを使うことはありません。


▲虫歯があります。

▲コンポジットレジン修復後。強度の都合上、すべての虫歯で適応ではありませんが、元の歯に近い色と形を持っています。

たなか歯科クリニック 三浦

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