歯科今昔6
こんにちは。
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お久し振りです。歯科医師の三浦です。
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時間は有限です。故に学校へ通う期間もまた限られています。例えば小学校は6年間。中学校は3年間。高校は3年間、という風に。
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大学は4年制のところが多いかも知れませんが、歯医者になるために通う「歯学部」はもう少し多く、6年制です。医学部や薬学部もこれに同じく6年間です。いずれの学部も人によっては6年間より多く通ってしまう方があるかも知れませんが、最低6年間通うことに変化はありません。
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国家が保証する資格を得るためにはそれなりの年月が必要です。日本初の歯科医は明治4(1874)年に当時設置されたばかりの国家試験に合格した小幡英之助という青年でした。以後、戦時中は医師と歯科医師の免許が両種一括して発行される時期を挟み、こんにちまで歯科医師国家試験は細部を変えつつも存在しています。
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日本初があるならば世界初もまたあります。19世紀初頭、まだ世界のどこにも歯学部はありませんでした。歯科業界をまとめ上げる存在がありませんでした。誰もが5から20ドル(現在の貨幣価値で約1万円)も出せば、ジャージーシティ(米ニュージャージー州)の中央医療大学や、フィラデルフィア内科外科大学で歯学の学位を買うことが出来ました。つまりは、歯科医への規制はないも同然でした。
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規制がない新天地アメリカでは歯科医が急増しました。1825年のアメリカには約100人の歯科医がいましたが、これが1830年代の不況を経て、失業中の職工が歯科医へ転職を果たしたため1840年には1200人へと増えていました。
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量が増えて、もともとよくなかった質がさらに下がるようになってしまいました。「まとも」な歯科医師はニセ歯科医の急増を憂い、ついに1840年、ボルチモア歯科医学校が開設の運びとなりました。世界初の歯学部の登場です。
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19世紀半ばになるとボルチモアその他の数少ない歯科医学校を卒業した、まともな歯科医が世間で散見されるようになりますが、それだけでは需要を満たすことが出来ずにいました。教育機関は出来ても歯科医をまとめる団体は相変わらず存在せず、いんちき歯科医は相変わらず跋扈していたのです。
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そんな中、1859年に発足したアメリカ歯科医師会(ADA)は画期的な組織でした。南北戦争で南部の歯科医が軒並み脱退する時代もありましたが、現在まで続く組織の1つで、歯科医をまとめる組織の登壇となったのです。
このADAが1866年に採択した「広告と個人勧誘を禁止する」宣言は、1977年まで有効で、効果もない治療の標榜や、道ばたで派手なパフォーマンス(抜歯)を禁じたものです。この宣言もまたセンセーショナルでした。それまでは効果があろうとなかろうと、また痛かろうがどうだろうが、めいめいが勝手な治療をしていたのですから。そしてそれがまかり通っていました。
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しかしながらADAは政府が認めた組織ではなく、従って宣言は命令ではありませんでした。そのため州によって宣言の受け止め方は異なり、西部の州では歯科医への規制がゆるいままであるという状況が続きました。それでも歯科医をまとめ上げる支柱となったのは例を見ない事態です。
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逆境にもめげず、また歯学部を卒業した歯科医が屋台骨となり、ADAは急成長を続け、1870年には登録歯科医の数はなんと13000人を超えていました。この年、アメリカ国内には9の歯学部がありました。ヨーロッパにもアジアにもいまだに歯学部は皆無だった時代に、です。日本の医学の祖はドイツですが、歯学の祖はこうした状況を踏まえてアメリカなのです。日本歯科医師会の設立は明治36(1903)年ですから、まだまだかなりの年月を経てのちのことになりますが。
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古代エジプトの時代から数千年以上にわたって民衆をだますニセ歯科医が跳梁する時代が続きましたが、こうして近代、信用ある組織が誕生し、きちんとした知識を与える施設があり、国家試験という一大イベントまで規定されるようになりました。いまや歯科医師という資格は誰もが取得できるいい加減なものではありませんので、安心して治療を受けに来てください。
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↑上下の歯並びの模型。これを基本にして、実際の口の中に即し、治療が進みます。
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たなか歯科クリニック 三浦唯一
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